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アクエリアスの風753号「ショパンのお稽古」
(2014年4月15日)
ほっと一息… ☆★☆アクエリアスの風753号「ショパンのお稽古」★☆★☆
実は最近、秘かにピアノの稽古をしている。 私は幼稚園から高校までずっとピアノを習っていた。 「大きくなったらピアニストになる」と言っていた頃もある。
子どもの頃は学校から帰ると、まずピアノに向かった。 ピアノを弾いていると嫌なことも忘れた。
大人になってピアノを弾かなくなって久しい。 でもいつか余裕ができたら、また弾きたいと思っていた。
念願だったピアノのお稽古復活! 「昔とった杵柄」とは、このことか。
ベートーベンのソナタから、リチャード・クレイダーマン、 最近はレディー・ガガ様まで弾けるようになった。
毎日、ヒマを見つけては練習している。 家で、会社で、バスの中で。手のひらの小さなピアノ。
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ええ、もちろんiPhoneピアノです。 ステキなアプリを発見したのです。左右の指1本で弾けます。
まあ本物ピアノに比べたら、物足りないっちゃ、物足りないですけど 本物のピアノなら、いきなり名曲は弾けないよ。 長年弾いてないので指が動きません。
夜中にリビングで、手のひらのピアノをかき鳴らす私。 たかがアプリなのに演奏に合わせて体が動く。陶酔、妄想リサイタル。 そんな様子を遠目に、いぶかしげに見つめる息子。
「もしかして、バスの中でも体が揺れてるんじゃない?」 息子は心配そうに尋ねる。 「かもね」と、体を揺らしながら答える私。(演奏中に話しかけないで!)
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昔、我が家にグランドピアノがあった。 思い出がいっぱい詰まったピアノだったけど、 主人が亡くなって、わずかなお金と引き換えに手放してしまった。
ピアノの場所がぽっかり空いたのを見ては、いつかグランドピアノを 取り戻そうと思っていたけれど、ピアノのない生活にも慣れた。
「ねえ、そういえばこの家にグランドピアノがあったよね」また息子が尋ねる。 「ああ、あったよね…」(だから話しかけるなって。ショパンのリサイタルなんだから) 「……ぼくが大人になったら買ってあげるよ」
演奏中止。
息子をギューッとして、その日のリサイタルは幕を閉じた。
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手のひらピアノは、妄想に一役買うだけじゃない。 緊張して声が上ずる癖のある生徒さんには「2音低い声を出して」と指導するが、 実際に音で示すと具体的にイメージできて、声の出し方を調整しやすい。
また、自分の声が一番響く音程を知ることは、あがり防止にもなる。 「ンー」とハミングして、小鼻がくすぐったい音程。 カラオケで歌い出しに気を遣うように、スピーチでも第一声を意識すると集中しやすい。
手のひらピアノが、いつかグランドピアノに化けるか?(息子よ、ガンバレ!) リズミカルに華やかに、ちょっと切なく。 ショパンは、今日も私の手の中で旋律を奏でている。
織田直子
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